緩和医療の在宅での治療では、疼痛や身体的・精神的な苦痛を取り除いたり、点滴などを行うわけですが、その方法には「ガイドライン」が設けられています。ガイドラインに沿った治療が行われる理由は、ひとりよがりの治療になってしまうのを避けるのと、いろいろな人の意見を取り入れて治療に当たることが大事だと考えられているからです。
緩和医療の実際は、痛みをとることがまず頭に浮かびますが、呼吸困難や食欲不振などの諸症状から身体症状、精神症状の軽減、これまでの抗がん剤や手術療法による副作用や障害に対するケアも重要です。これによって、患者や家族の生活の質(クオリティ・オブ・ライフ=QOL)を維持、向上させるということが治療の目的となります。QOLは、患者自身の「主観的な満足度」という意味です。どのような治療でも、本人や家族が満足しなければ意味がありません。
また、終末医療で難しいのが延命処置をどこまで行うのかの判断です。延命処置とは、「生命維持処置を施すことによって、生命の延長を図る治療」と考えられています。がんの終末期では、人工呼吸器を新たに使用したり、心臓マッサージを施すことは一般的には行われません。苦痛をとる手段はだいぶ進歩しましたが、1割くらいの人は苦痛をコントロールすることができません。そんな場合には、放射線治療や鎮痛補助薬といったものを併用して、治療にあたります。また、心のケアも緩和治療では重要なのです。ガイドラインは治療の全てを決めるものではありませんが、在宅での終末医療の質を均一にするためにも有効です。